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馬糞おが屑堆肥

畑に堆肥を施用しないと、どんどん土壌がやせ細っていきます。土が固くなり、根張り、水はけが悪くなったり、また、植物は土の中の栄養分を吸収して育ち、それを人が作物として収穫して畑から持ち出すことによって、栄養分も欠乏していきます。結果、植物を育てる環境が悪くなり、生育不良、病害発生につながります。

自然の環境で植物が育つ仕組みは、落葉・動物の糞尿・死骸といった有機物を土の中の微生物が食べて無機物に分解し、その無機物を栄養素として植物が吸収します。一方で圃場(畑)は自然のサイクルがないため栄養素を定期的に与える必要があります。それが堆肥や肥料になります。

ところで、堆肥とは何でしょうか。堆肥とは家畜糞や落葉といった有機物を微生物によって分解・発酵させたもので、栄養分補充よりも、土壌改良に効果があり、原料には家畜糞、落葉、稲わら、もみ殻、粉砕した木質などがあります。またそれぞれ効果に違いがあるので、特徴に合わせて使用する必要があります。

作物が丈夫に育つには、しっかりと根を張り、栄養分、水分を吸収できる土壌環境が大切です。そのためには土壌の物理性、生物性、化学性を富ませていく必要があります。

物理性とは、保水性・排水性・通気性がよい団粒構造の土壌となっていること。土壌の構造として、固相(土壌粒子)、液相(土壌水分)、気相(土壌空気)の三相構造になっています。植物・微生物が生育するには40%、30%、30%が適値とされていて、堆肥などの腐植物を投入することによって、バランスよい三相構造を作ることができます。

生物性は、多様な微生物がいること。土壌の中には様々な微生物がいて、なかには作物の生長に有効に働くものもあれば、病原菌となるものも存在します。病原菌が異常に増殖すると病害が発生しますが、有効微生物と病原菌が生存競争することで、異常増殖を抑制することができます。

化学性は保肥力のことで、植物が生育に必要な栄養素として多量要素(窒素・リン酸・カリウム)と中量要素(カルシウム・マグネシウム)、微量要素(硫黄、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素)があり、それらを土壌中で保てる力を言います。せっかく土壌に栄養分を投入しても、保肥力がないと、雨などで栄養分が流亡してしまいます。この栄養分のほとんどが陽イオンの性質を持っていて、堆肥などの腐植物は陽イオンを吸着させるマイナス電荷の性質があります。そのため堆肥を投入することで栄養分が土壌に吸着され、化学性つまり保肥力の向上につながるのです。

このように堆肥を投入することによって、土壌環境が良くなり、作物が育つ環境が整う訳です。そして、よい土壌を作るには毎年一反(いったん、10a)あたり、2tの堆肥を投入することが良いとされています。

さて、堆肥の説明が長くなってしまいましたが、雑木林から集めた腐葉土だけでは堆肥が足りないので、無償で入手できる近隣にある東京農工大学馬術部の馬糞も堆肥として使っています。
馬糞は寝床に藁やおが屑などが使われているため、糞との割合が1:9が一般的で、他の鶏・豚・牛と比較して植物性有機物が多いのが特徴です。
有機物をえさとして土壌の微生物が活性化されるため、土壌改良効果が高いとされています。

馬が身近にいる環境は日本全国そうはありません。馬糞はとても貴重な堆肥です。冨澤ファームのある三鷹周辺は、東大馬術部の馬場、東京競馬場、そして東京農工大学と馬糞のある場所が複数あります。どこも馬糞の処理に困っていて、もらってくれる先を探しています。滅多に入手できない、馬糞がふんだんにあり、それを無償で入手できるありがたい環境、使わない手はありません。馬糞は大学馬術部にとっては廃棄物ですが、農家にとっては貴重な資源。東京の農地は廃棄物の受け皿として地域資源の有効活用や課題解決にも一役買っています。

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